「岳の幟(のぼり)」
雨の少ないこの地方では、数多くのため池が作られましたが、それでも、日照りの時は水が足りなくなり、そこで神事に頼る雨乞いが行われました。
「岳の幟」は、別所温泉に伝わるめずらし雨乞いの祭りです。毎年七月中旬の日曜日早朝、住民たちが夫神岳(男神岳)に上り、頂上で今年の豊作を祈って、青竹に布を飾った幟の行列をつくって山を降り、おはらいを受けた後、再び行列がつくられ、別所神社まで別所の各地区を巡ります。
色とりどりの布のついた幟が風にはためき、緑一色の山麓を下ってくるさまは、とにかく見事とというほかはありません。
「岳の幟の起源」
昔何年も日照りが続き、川の水が絶え、井戸の水も乾いてしまった時、作物ができないばかりか、人間が死んでしまいそうになりました。それで村の人々が相談をし、男神岳と女神岳との両山へお祈りをして、「もしも大雨を降らせて、民をお救いくだされば、あらん限りの供物を差し上げます」と申し上げました。
そして長い布を張って竜神の姿をあらわして、布を立て並べて行くと、男神岳の山の上に、九頭龍のような形の霊体があらわれて、だんだん女神岳の上の方へ進んで、山を覆ってしまいました。すると間もなく、大雨が降って来て、村人は救われました。これよりお祭りごとに今も、幟をたくさん献じるようになったそうです。
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