安楽寺


八角三重塔  

 杉の古木の立ち並ぶ坂道を上がって行くと、そこに国宝「八角三重塔」があります。それは日本に唯一といわれる「唐様(からよう)」の古塔です。「唐様」とは「中国風」ということで、安楽寺は13世紀の終わりごろ(鎌倉時代)に創建されたといわれていますが、中国との関係の深いお寺なのです。

  

 

「老いの眼に
  観る日のありぬ
   別所なる
    唐風八角三重塔」

     窪田 空穂


左・二世 幼牛恵仁坐像 右・樵谷惟仙坐像 

 

 安楽寺が創建されるしばらく前のこと、幕府が置かれた鎌倉に、中国で修行して帰国した禅僧「蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)」が建長寺を開きました。
 蘭渓道隆が中国から帰国した時、「樵谷惟仙(しょうこくいせん)」という禅僧が同行していましたが、この人が安楽寺を開いたのです。またこの時、惟仙と一緒に塩田にやってきた帰化僧「幼牛惠仁(ようぎうえにん)」が惟仙の後継者となりました。
 インドで興った仏教は中国を経てわが国に渡来したのですが、この時代にも、広くアジアの国々を結んだ人と文化の交流が、信濃にまで及んでいたということは本当に驚きです。
 このような国際交流の象徴の一つが「唐様八角塔」だといえましょう。