大法寺

 碓氷峠を越えて信濃の国に入った東山道は、上田を抜けたところで、千曲川を南に渡ります。そして山沿いを西に向い、浦野を通り保福寺峠を越えて松本平にでます。この浦野の山ふところに大法寺があります。

「見返りの塔」 

 このお寺は奈良時代のはじめ(西暦700年ごろ)に創建されたと伝えられていますが、このお寺には立派な三重塔があります。この塔は西暦1333年に建立されたものですが、山沿いの道を東に西に行き来する旅人たちが、その美しさに見とれて去りがたく、何遍も見返りながら旅を続けたということから「見返りの塔」と呼ばれています。

 

「十一面観音立像」 

 このお寺にある観音さまはお身丈(みたけ)171cm。桂の一木造りです。この観音様の前に立つと、なぜか去りがたく、足がとまってしまいます。お顔だちはおだやかで上品なお姿は、御前に立つ人を、優しく抱き寄せてくださるような気持ちがします。平安の優美さをたたえ、気品に満ちた仏様です。かつて倉田文作元奈良博物館長(故人)は、「塩田平と中央文化が結びつき、鎌倉時代にさきがけて、この土地に咲いた仏教美術の花のひとつである」といっておられたのこと。